子どもの咳
お子さまの咳は、ウイルス感染、アレルギー反応、または環境の刺激など、さまざまな要因で引き起こります。咳は体が異物や炎症に対して防御反応として現れる自然な症状ですが、長期間続く場合や、日常生活に支障が出るほどひどい場合は注意が必要です。夜中や早朝に咳が強くなると、睡眠の質が低下し、成長にも影響を及ぼすことがあります。お子さまの体調や周囲の環境を見直し、十分な水分補給や適切な加湿、そして安静な環境作りを心がけるとともに、症状が続く場合は早期に医師の診察を受けることが大切です。
咳の種類
咳の音には様々な特徴があり、その違いはお子さまの状態を知るための大切なヒントとなります。受診時に日中はあまり咳が見受けられない場合でも、ご自宅で普段耳にする咳の音について、どのように感じたかをお伝えいただけると助かります。なお、特に特徴的な咳の場合は、スマートフォンなどで動画として記録しておくと、診察の際に非常に有用な情報となります。
- 乾いた咳:軽く「コンコン」といった音がする
- 痰が絡む咳:重く「ゲホゲホ」「ゼロゼロ」といった音
- 犬の吠え声やオットセイの声に似た咳:独特の「ケンケン」という音
- 喘鳴:連続して「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった音が聞こえる
受診をして欲しい子どもの咳
お子さまの咳が長引く、普段と違う様子が見られる場合は早めに医療機関を受診してください。特に咳が止まらず呼吸に異常がある、または体全体の調子が悪そうな場合は注意が必要です。以下の症状が見られる場合はすぐに受診を検討しましょう。
受診が必要なサイン
- 咳が止まらない
- 異物が詰まっているような感覚がある
- 鎖骨の上や肋骨の下が、呼吸に合わせて沈む(陥没呼吸)
- 顔色が悪い
- 眠れない
長引く咳の原因となる病気
風邪(感冒・かぜ症候群)
ウイルス感染によって、鼻や喉など上気道に急性の炎症が生じる状態です。主な症状は、咳、鼻水、鼻づまり、発熱などで、RSウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどが原因となります。通常、症状は7日~10日間ほどで改善しますが、感染後に気道が過敏になって咳が長引く場合もあり、その場合は追加の検査(レントゲンや血液検査)を行うことがあります。
クループ症候群(急性喉頭気管支炎)
特に3歳までの乳幼児に多く見られ、急激な喉頭・気管支の炎症が起こることが特徴です。お子さまは、オットセイのような「ケンケン」という咳を出し、呼吸が苦しくなります。症状が進むと、呼吸時に鎖骨や肋骨の下部がへこむ陥没呼吸が見られ、酸素投与が必要な場合もあります。治療は吸入薬やステロイド投与を行います。
副鼻腔炎(蓄膿症)
副鼻腔は鼻腔の周りにある空洞で、そこに炎症が起こると副鼻腔炎となります。黄色く粘り気のある鼻水や、鼻から喉にかけて鼻水が流れ落ちる後鼻漏、痰が絡む咳、さらには顔面の痛みなどが現れます。急性の場合は抗菌薬で治療し、慢性化している場合は手術が必要となることもあります.
気管支喘息(小児喘息)
気道の炎症によって、一時的に気道が狭くなり喘鳴(「ヒューヒュー」「ゼーゼー」)や呼吸困難を引き起こす疾患です。アレルギーが関与することが多いですが、必ずしもそうでない場合もあります。風邪が治った後も咳が続く、夜間や早朝に悪化する、運動時に息苦しくなるなどの症状がある場合は、気管支喘息の可能性が高く早期受診が望まれます。
百日咳
百日咳菌による感染症で、潜伏期間は約1週間~10日です。初期の「カタル期」では鼻水や咳が1~2週間続き、その後、顔を真っ赤にして短く「コンコン」と連続する咳が出現し、最後に大きく息を吸い込む際に「ヒュー」という特徴的な音が聞かれます。全数把握対象の感染症で、診断時には届け出が必要です。新生児では無呼吸発作を起こすことがあり注意が必要で入院となるケースもあります。百日咳は抗菌薬で治療します。
気道異物
気道に異物が侵入すると、空気の通り道が妨げられ、呼吸に支障が出る危険な状態になります。十分な空気が通らないと窒息のリスクが高まりますが、多少空気が通る場合でも長引く咳や喘鳴が見られます。異物が小さくレントゲンで確認できない場合は、CT検査や内視鏡検査が必要になることもあります。当院では、必要に応じて高次医療機関へご紹介しています。
誤飲と誤嚥
誤飲とは、飲み込んだ異物が食道に入る状態を指し、誤嚥は異物が気道に入る状況です。誤嚥は呼吸困難や窒息の危険性が高く、迅速な対応が求められます。通常、誤飲の場合は声が出て呼吸が正常であれば大きな問題は生じませんが、ボタン電池など危険なものは速やかに救急外来を受診してください。
胃食道逆流症
胃酸や消化酵素を含む胃の内容物が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。逆流した内容物が気管支を刺激すると、咳が出ることもあります。日中に空咳が頻発する、横になった時に咳が強くなる場合は、胃食道逆流症が原因のひとつかもしれません。
心因性咳嗽
心因性咳嗽は、ストレスや緊張など心理的要因が気道に影響を与え、乾いた咳を引き起こす状態です。日中は咳が頻発する一方、睡眠中はほとんど咳が見られないため、外部環境の影響が少ない点が特徴です。他の咳の原因を除外した上で診断されます。
長引く咳の検査
長期間続く咳の場合、まずは詳しい問診と診察でお子さまの症状の経過や生活環境を確認します。次に、胸部X線検査、呼吸機能検査、血液検査などを実施し、気道の炎症や感染症、アレルギーの有無を詳しく調べます。これにより、原因となる疾患を特定し、最適な治療計画を立てるための判断材料とします。
子どもの咳が現れた時の対応
子どもの咳が続いていると、保護者の方は少しでもお子さまを楽にしてあげたいと願うものです。咳の症状を和らげる方法や、受診すべきタイミングの目安は下記が挙げられます。
こまめな水分補給
喉や気管の乾燥によりウイルスや細菌からの防御機能が低下し、些細な刺激で咳が出やすくなります。こまめに水分を摂らせ、喉をしっかり潤わせることが大切です。
喉を温かく保つ
喉が冷えると粘膜が敏感になり、咳の原因になります。ネックウォーマーを使ったり、温かい飲み物を与えたりして、喉の温度を保つようにしましょう。
室内の加湿
部屋の空気が乾燥していると喉や気管の粘膜が乾いてしまい、咳が出やすくなります。加湿器の使用や、室内干しの洗濯物、湯気を活用して適切な湿度を保ちましょう。
室温の調整
寒い室内は、冷たい空気が直接喉を刺激して咳を誘発します。エアコンを使用する場合は加湿器と併用するか、床暖房などで部屋全体を温かく保ち、適切な温度管理を心がけましょう。
室内の清掃
埃やダニは、咳の引き金となる場合があります。部屋の隅やエアコンのフィルターをこまめに掃除して、清潔な環境を維持するようにしましょう。
背中を優しくたたく
激しい咳でお子さまが苦しんでいる場合は、背中を軽くトントンとたたいてあげると、痰が出やすくなり、呼吸が楽になることがあります。
長引く咳のよくある質問
夜中や早朝に咳が多くなるのはどうしてですか?
夜間は体温が下がり気道が乾燥しやすくなるため、咳が出やすくなります。また、寝ている間は自律神経の働きにより気道が収縮しやすくなることも影響しています。
子どもの咳が長引いており、治療しても治らない場合はどうすればいいですか?
長期間続く咳は、原因が複数重なっている可能性があります。再度専門医に相談し、詳細な検査や治療方針の見直しを行うことが大切です。
子どもが咳とともに吐いてしまいましたがどうすればいいですか?
咳とともに嘔吐が見られる場合は、強い嘔吐反射や気道の異物感が原因かもしれません。早めに医療機関で診察を受け、適切な対応をしてください。
子どもの咳で受診をした方がいい目安はありますか?
咳が数日以上続き、発熱や呼吸困難、元気がないなどの症状が伴う場合は、早期に医療機関を受診することをおすすめします。
熱がないのに咳が止まらないのはどうしてですか?
熱がなくても、アレルギーや慢性的な気道の炎症、環境刺激が原因で咳が続く場合があります。状況に応じて医師にご相談ください。